「ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集」

 

タイトルに惹かれて図書館で借りた。

なんとも不思議な雰囲気の本だった。

 

自分はいとも簡単に大人になったように思えるけど、本の内容のような心地良くて不思議な時間があったんだろうと思う。でもきっと忘れてしまっている。

たとえば国語の授業で、それは丁寧に詩を教えてもらったこともそうだ。ここが比喩になってて、ここは体現止めに。ここは作者の故郷の風景が描かれている、とか。

 

一番印象に残ったのは「人生が1時間だとしたら」(高階 杞一)

人生が1時間だとしたら
 春は15分
 その間に
 正しい箸の持ち方と
 自転車の乗り方を覚え
 世界中の町の名前と河の名前を覚え
 さらに
 たくさんの規律や言葉やお別れの仕方を覚え
 それから
 覚えたての自転車に乗って
 どこか遠くの町で
 恋をして
 ふられて泣くんだ

 人生が1時間だとしたら
 残りの45分
 きっとその
 春の楽しかった思い出だけで生きられる

その通りだと思った。人間は誰にも学生時代があって、色々な人と出会う。恋をすることもあるだろう。そのような時間が自分を形成し、血となり肉となる。
この詩を読んで「恋と嘘」の美咲を思い出した。

今日この30分の思い出だけで
あと70年は生きていける気がする 

そんなものである。美咲にとっては"春"が今日の30分の思い出。

 

それにしても詩を読むのは国語の授業ぶりだから読み方に自信がなかった。

恋と嘘(1) (マンガボックスコミックス)

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